多田弘幸

エクセレンスチタン開発担当

多田弘幸

チタンと会話しながら理想のバネ性をもつ新素材に

「使用する素材から生み出してしまったというブランドは、あまりないかもしれません」と語るのは、エクセレンスチタンの開発を担当した多田弘幸です。
「強くて丈夫で軽いチタンは、メガネの素材としてそれまでにも使用されていました。でも“究極のかけごこち”に欠かせないバネ性を叶えるには、純チタンでは硬すぎるし、形状記憶合金として知られるニッケルチタンにしても、飛行機や車などメガネ以外のために開発された素材なので使い勝手が良くはなかったのです」。理想の素材がないのなら、自らの手で生み出せばいい。
1995年から2年にわたりワシントン大学の材料工学研究室でチタン合金の超弾性について学び、2000年より東北大学金属材料研究所とともにチタン合金の共同開発をスタートします。目指したのは、チタンが持つ特性にやさしさ、しなやかさをプラスした新しい金属。その過程は想像以上に大変なものでした。 200種類以上の組成を調査し、合金組成の配合比率を探る毎日。東北大学総長(当時)に助言を仰ぎ、ようやく塗装、メッキを行っても弾性を失わない金属配合率を発見できたのは、2006年のことでした。その後、デザインや加工技術の開発を経てラインアートが誕生した時の感想は?
「農家の方があれこれ料理せず野菜そのものを食べてほしいと思うように、僕は素材屋なのでシンプルなデザインのメガネで良いと思っていたんです。でも、思いがけない機能性と美しさを加えたメガネが完成して驚きました。そうなると次はどんなスゴい素材を開発しようかと、こちらも新しい夢が広がります」。

強くて軽く、
丈夫なチタンに
独自の“やさしさ”を
加えました多田弘幸

メガネフレームとして最適な成分を選び出すために、作成・評価したインゴットは数百種類以上にものぼった。